うつ病の治療 ご家族

うつ病の治療 ご家族

ご家族の方がうつ病と診断されたことで、不安なお気持ちを抱えていらっしゃることと思います。
今までにも書いてきたように、うつ病の軽症化が進んできている今、「本当に病気なのか?」という疑問が出てきてしまうことも、あるのではないでしょうか?
そんな時、次の項目を読むことで、少しでも落ち着くことができればと祈ります。

うつ病とは、診断されたご本人でさえ、ご自身が本当にうつ病という病気なのか、ただの怠けではないのかと、医師に診断されても信じられないお気持ちでいらっしゃいます。
それだけに、いちばん身近にいらっしゃるご家族の方に、「怠けでは?」 と言われてしまうと、「やはり怠けなのでは」とお気持ちが乱れてしまい、それが治療の妨げになる可能性があります。
ご本人でさえ迷ってしまうくらいですから、ご家族の方の迷いはさらに深く、不安なお気持ちになってしまうかもしれませんが、うつ病と向き合っているご本人に対して、直接問いかけるのは、控えていただくのが、今後のために適切ではないかと思います。

  1. 「病気か、病気ではないか」という判断は、専門家にお任せ下さい。
    症状がそれほど重くない場合、落ち込んでいるかどうかも感じられないなど、「本当に病気だろうか?」と思うことも、あるかと思います。
    ですが、私達家族は、うつ病に関しては初心者に過ぎません。
    「病気か、病気ではないか」などという、専門的な判断を下せようはずもないのです。
    症状の軽重、回復途中にあるかどうかなども同様です。
    またそれは、うつ病の方ご本人にも言えることです。
    ご本人が、独断で「もう治った」と言ったとしても、一度専門家の判断を仰ぐよう説得してみて下さい。
  2. 悩みを言わないからといって、悩んでいないわけではない、ということを、ご理解下さい。
    うつ病の方の多くは、悩みを控えめにしか言いません。
    自分の本当の苦しみは、他人にはわかってもらえないだろうと考えているためです。
    ですから、その悩みの内容を聞き出し、「よくわかる」と言うよりは、「誰にもわかってもらえない悩みを抱えていて、苦しいと思っている気持ちが伝わってくるよ」と言う方が、より、その方の「何をわかって欲しいか」という気持ちに添っていると言えるのかもしれません。
    そして、話せることから徐々に話してくれるよう、かたわらに控えているような姿勢でいることが、大切ではないでしょうか。
  3. ご家族の役割とは、「ブレーキ」ではないでしょうか。
    真面目な性格の方だと思いますから、仕事を休もうとしないかもしれません。
    早く治そうと、やみくもに活動しようとするかもしれません。
    もう治ったからと、職場に性急に復帰しようとするかもしれません。
    また、治らないと決め込んで、命を断とうとするかもしれません。
    それらを、止めることだと思うのです。
    「何も考えなくていい、何もしなくていい、ゆっくり休んで、回復を待ってほしい」
    折りに触れて、そう告げることが大切なのではないでしょうか。
    「頑張れ」「しっかりしろ」と言うことは、この病気においてはタブーとされています。
    周りが気づかなくても、ご本人は、がむしゃらに頑張っているからです。
    周りから言われることが、大きなプレッシャーとなってしまいます。
    この病気において、「待つ」ということは、とても大きな意味を持っています。
    薬や診察、カウンセリングなどの効果に加えて、人の持つ自然治癒力の効果も見逃せないからです。
    そうしたご家族の方のご理解、ご協力が、回復を大きく助けることだろうと思います。
    どうか、諦めないで下さい。
  4. どうか、言動にご注意下さい。
    うつ病の方は、もともとが気配りのできる人ですので、人の気持ちを汲むのが、とても上手です。
    それが特に敏感になっている時でもあり、また、悲観的な考えに傾きがちになっている時でもあります。
    皆の負担になっているのではないかという不安が、その方の中に、常にあります。
    ぼーっと座っているだけに見える時、まどろんでいる時でさえもです。
    また、「早く何とかしなくては」という焦りの気持ちは、なるべく持たないよう、気をつけていただければと思います。
    気持ちは、敏感に相手に伝わってしまいます。
    「何とかしなくては」という焦りが、その方に伝わった時点で「早く死ななくては」に変化してしまう可能性すらあります。
    自然治癒力も見逃せません。
    どうか焦らずに、現状を見守る勇気をお持ち下さい。
  5. ご自分を大切になさって下さい。
    うつ病の方にとって、ご家族は、なくてはならない存在です。
    うつ病とは?」でも書きましたが、原因がなく発病する場合も多いのです。
    ご家族の方や、職場の方に原因があるわけではありません。
    ご自分を責めないようにお願いします。
    うつ病の方の助けとなるためにも、うつ病の方に協力すると同時に、ご自分の体も、いたわってあげて下さい。
    病院によっては、ご家族のケアも同時に行なっているところもあります。
    また、地域の保健所も同様で、そのような仕事をするソーシャルワーカーの方もいらっしゃいます。
    自分一人ではどうにもならない、と感じることがあったなら、そういった場所を利用してみるのもいいかと思います。
  6. うつ病の方は、100%「死にたい」と思っているわけではありません。
    何度自殺未遂を繰り返している方でも、何が何でも死にたいと思っているわけではないのだということをご理解下さい。
    かと言って、決して狂言などではありません。
    運を天に任せて……、というような気持ちでしょうか。
    常に、「生きたい気持ち」と「死にたい気持ち」の間での葛藤があるはずなのです。
    どちらもが本音です。
    助けてほしいと強く望みながら、それが人の負担になるなら消えてしまいたい……、そう考えています。 どうか、ご理解下さい。

うつ病の治療は、長期戦となる可能性があります。
うつ病の方のご家族の方は、たいへん辛い、我慢しなければならない局面の連続で、とても苦しいこととお察しします。
ですから、ご自身のストレス発散も、時には優先して下さい。

誰かに苦しさをお話するのも、いいと思います。
「病気の人を支えるのは、家族の役目」と言われてしまうかもしれません。
それは、事実ではあるのですが、ご家族が孤立してしまう可能性のある、怖い状態です。
少なくとも、「私達の家は、家族にうつ病の人がいるので、その看病に疲れています」という事実は、周り、特にソーシャルワーカーなどには伝えておいた方がいいと思います。
ご自身の力だけをふりしぼって看病にあたるのは、あなた自身の健康を害することにも、なりかねません。
あなたもまた、誰かに支えて欲しいと思う時があると思います。
それは、大切な気持ちです。
どうか、ご家族だけで抱え込まないで下さい。